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2023/8/17…初稿
「CDが売れない」と言われ出して久しいが、最近はもはやそういった話すらも下火になりつつあるような気がする。
日本は世界的に見ると特にCDの購入数が多いと聴く。
支払いはキャッシュレスよりも現金。フィギュア、トレーディングカード等のコレクターの多い文化等から考えても、「日本人=有形物が好き」という見解が一般的となっている。
それゆえ、手に入れた感覚のないデジタル配信よりもコレクター性の高いCDの需要が高いわけである。
10年ほど前にはアイドルの握手券の封入されたCDが大量に購入され、握手券をゲットして用済みとなったCDが大量に廃棄されることが社会問題となった。
日本ではまだまだゴミの排出量に関する環境問題に関心が薄い人が多く、大量のプラスチック資源がゴミとなることが焦点ではなかったように思う。それよりも「CDが勿体ない」という論調だったと思う。CDというものはもっと丁寧に扱うものだ、と言うような。
その時から既にCDは終了へと向かうメディアだった。
CDの容量、音質は限界があり、デジタル配信はそれを突破できる。
そして、サブスクも始まった。
要は登録制サービスで、買い切りではない。月額を支払い聴き放題、という形だ。
デメリットとして「所有」が出来ないため、サービス終了とともに聴けなくなることが多い。あくまで聴く権利を買っているという考え方だ。
僕と音楽配信サービス
さて、僕自身が長年音楽活動をしていた事もあり、このCDとデジタル配信の問題はまさに渦中。デジタルへの過渡期に揉まれていた。
僕自身はCD派。やはり作る側としてジャケットのアートワークにもこだわりがあったし、歌詞カードも見てほしい。先に歌詞カードを読むのか、まずは曲をざっと聴いてしまうのか。CDを読み込んで再生するまでのあのじれったいロードタイムもいとおしい。
■2010年代、後半
2010年代後半くらいの曲のリリース時は「CDもだけど、とりあえず配信も両方乗せとく?」というテンション感だった。どっちの派閥もあり、どっちにも手に取りやすいよう、間口を広げておくような。
まだまだ「デジタルのみ」は伸びないような時代だった。
当時の僕もアーティストとして一応デジタルも配信してみるが、いずれのサービスも利用したことが無かった。Spotify、AWA等のサブスクも、iTunesやレコチョク等の配信サービスも。今だから言えるが、何ならCDより下に見ていたフシもある。
■2020年前後
2020年前後あたりから、「ネットで曲がバズる」という現象が起き始める。
こうなるとネットの方が足が速い。CDとしてリリースされていない、いわば王道の手段では無い曲が急にヒットチャートに躍り出てくる。これは不思議な現象だった。
「CDで見かけたことのないこの人はいったい何物なんだ…?」という疑問がまた認知度を加速させる。そういったネットから発生したアーティストが顕著に増えてきた。
これは大きな転換点になった。
■現在
そして今、いちリスナーとしてSpotifyに登録してみようかなと思うまでに至った。
今までにこういった月額単位で音楽サービスに課金を行ったことが無かったので、完全に興味本位だ。
Spotifyとは
2010年くらいに読んだ雑誌に、「これからの時代はSpotifyが来ますよ」的なものを見かけた記憶がある。今でも覚えているくらい、印象に残っている。
そんなSpotifyは2008年にサービス開始。スウェーデンで生まれた音楽ストリーミングサービスだが、現地での海賊版及び違法音楽問題を解決する目的で誕生したらしい。素晴らしい。
2013年に日本法人が誕生。2016年にサービス開始。2023年現在で世界最大手の巨大サービスとなった。楽曲は1億曲以上、183もの国と地域でサービス展開を行っている。
■楽曲の聴き方
Spotifyの提供する聴き切れないほどの膨大なプレイリストを選ぶも良し、一曲ずつ聴くも良し、プレイリストを自分で作っちゃうのも良し。
パソコンはもちろん、スマートフォンから聴けるのも良い。ダウンロードが不要なので容量も圧迫せず、なおかつ高音質。(電波さえあれば)
途中で広告が入ることもなく、手軽。有料である点はデメリットかもしれないが、本来無料で聴けるものでは無いため妥当である。
この手軽さ、利便性が今っぽい。場所を問わずアクセス出来るのも良い。
実際に使ってみる
Spotifyのサイトにアクセスしてみる。
トップページからずらりと曲が並ぶ。
手あたり次第に再生したくなるが、まずは会員登録が必要だ。
会員登録は無料。会員登録すればとりあえず再生できる。
■無料版
他社のサービスでは無料版は制限のある所が多く、例えば「登録から一定期間のみ」という期間制限だったり再生回数や再生時間数の上限が定められていたりする。
逆にSpotifyは無料でもこれらの制限は無い。ただしシャッフル再生のみとなり、イメージとしてはラジオのように受動的に流れてくる音楽をBGMにするような使い方となる。嫌いな曲ならスキップも可能だが、スキップ回数には上限がある。
なお、曲と曲の間に広告が入る。これはまぁ無料なので仕方が無い。
途中にコマーシャルが挟まる事でサービスが成り立っているという面では、テレビやラジオが無料なのと同じシステムだ。
色々な楽曲を無作為に流してラジオから流れるBGMのように使いたいならば、無料版でも充分かもしれない。
■有料版
しかし人間とは欲深い生き物。
「ヒットチャートが聴きたいな」「ドライブにぴったりなチューンが良い」「ミッドナイトはムーディーなジャズを」「睡眠導入に使えそうな曲ないの?」「朝はやっぱりクラシック」——ええい、うるさい!いいか、彷徨える欲の権化たちよ、聞くがよい。Spotifyには全部、あるのだ。
有料版は「検索」が出来る。
楽曲名はもちろん、ジャンルもいける。キーワードもアリで、「夏」とか入力したら夏のプレイリストがズラっと出てくる。「夏の夜」「夏のドライブ」「BBQソング」…などなど。
そもそも検索を押すだけでズラっとジャンルが出てくる。ヤバい。音楽ってこんなにジャンルあるのか。
ロック、ジャズ、クラシック、パンク、カントリー、オルタナ…ジャンルは網羅されている。
ムード別もあり、チル、フォーカス、睡眠、ドライブ等もある。
この聴き切れないほどの楽曲全てが指先の操作だけで聴けるなんて、CD人間からすると恐ろしい時代だ。
全てがこの箱の中にある。厳密にはネットワーク上だけど。
そんな有料版「Spotify Premium」の「Standard」は月額980円だ。
他社を見ても価格や内容はさほど変わりなく、特別高くも安くも無い。一ヶ月無料お試しも付いている。
また、同一住所での複数アカウント契約でお得になる「Duo」「Family」、大学・専門学校・短大等の学生を対象とした「Student」もある。
また、有料版は予め楽曲のダウンロードも可能。ドライブ前、Wi-Fi環境下で楽曲をダウンロードしておき、ドライブ中も快適に音楽を楽しむ、なんて使い方が出来る。
メリットとデメリット
■メリット
豊富な楽曲
さすが大手Spotify。基本的に「曲が見つからない、困った」という事が無い。
製作者がSpotifyに登録さえしていれば、インディーズの曲だって見つけられる。
新作もすぐに聴く事が出来る。トレンドも追いかけやすく、音楽アプリはSpotifyだけで十分と言える。
デバイス間で同期できる
同一アカウントでログインしていれば、再生履歴や再生中の楽曲データは共有される。
また、同一Wi-Fi下ならば、一台のデバイスで他のデバイスの再生をコントロールできる。これは意外と便利だ。
PCで楽曲を聴いていて、外出するときはスマホで続きを。帰宅したらスマホから操作してPCで再生開始。こんな感じで再生のわずらわしさを低減する事が出来る。
■デメリット
月額制へのハードル
月額980円かかるわけだが、果たして毎日32.2円分*1聴けているだろうか。
僕は十分32円どころじゃない額を聴いていると思うんだけど、こちらはこのSpotifyに限らず月額サービスを使う時には確認したい部分だ。それだけの額に見合う恩恵を受けているだろうか?
こちらで「うーん…どうだろう…?」と思ってしまうならば、もしかするとこのサービスは向いていないのかもしれない。
Spotifyにある曲しか聴けない
例えば今現在mp3やaac形式などで楽曲を持っていたとしてもSpotifyでは聴く事が出来ない。それはお持ちのデバイスで再生してもらう事になる。
Spotifyでプレイリストの作成は出来るが、Spotify上にある曲でしか作ることは出来ない。これがもしかしたらデメリットに感じる人もいるかもしれない。
また、アーティストやレーベルの方針によってはSpotifyに楽曲を置いていない事もある。そういった楽曲はもちろん聴く事が出来ない。
僕の使い方
さて、僕は有料プランに申し込んでみた。とりあえず1ヶ月無料なので楽しんでみようと思う。
もしかしたら一ヶ月後に解約してるかもしれない。果たしてどうなるのか。
なお、僕は気に入った曲をヘビーローテーションするタイプでは無く、まだ見ぬ楽曲だったりムードに合わせた曲を選んで聴いたりしたいタイプだ。
つまりSpotifyに用意された膨大なプレイリストは僕のような聴き方をする人向きだと思っている。
もちろん、毎週更新されるヒットチャートを聴き続ける楽しみ方でも十分そうだが。
また一ヶ月後くらいに、僕なりのSpotifyライフをお届け予定だ。
一ヶ月後
一ヶ月が経った。
結論から言えば、まだ使い続けている。
他に競合するサービスを使っていないならば十分にアリだ。
朝はテンションの上がる曲を、仕事をするときはフォーカス出来るような曲を、全部が終わってウイスキーを転がしたいときにはラウンジで流れるようなジャズを。主にBGMとして使う事が多い。
検索を上手く使えば「秋を感じるJ-POP」「ドライブに適したプレイリスト」なんかも見つけることが出来る。検索ワードは単語だけ入れておいても結構ヒットしてくれる。僕は「夏」「秋」「朝」「夜」などの時期を示す言葉で検索することが多い。
このまま大幅な値上がりや重大なが無ければ使い続けるだろう。
音楽が身近にある生活というのは、なんとも贅沢に感じる。
*1:月額980円×12ヶ月÷365日とした