婚約指輪を買う。これこそ一生に一度しか出来ない体験であり、このブログに即した内容ではないか。
これは事後報告にはなるが、先日婚姻届が無事に受理され結婚をした。
結婚に関することもまた別でひとつの記事にするが、こちらは婚約に関する話となる。
また、このブログではあくまでも主題にフォーカスし、相手に関する話はほぼ出てこないので先に但書としておく。
婚約について
法的な解釈
婚約とは当事者同士が結婚の約束をすることである。
両者双方の明確な合意があれば、書面やプロポーズが無くとも成立したものと見做される。法的な観点から言えば、口約束も契約と判断することは可能である。
書面や手続きの類は不要だが、婚約をしたと判断される事象発生の後に何かしらの詐欺があれば罪に問われる。いわゆる結婚詐欺というやつだ。
婚約は結婚とは違い、届出や申請は不要。文字の通り、「結婚の約束」が婚約である。
指輪について
婚約に際して指輪は絶対に必要というわけでは無い。言わずもがな結婚に関しても必須では無い。様々な考え方や事情がある。
ただし、例えば検索をしてみると、あたかも「買うのが当たり前」というテイでの記事が多く出てくる。しかしこれらを記述しているのは多くが結婚情報サイトや宝飾店である。つまり「売りたい側」が書いているので、当然買わせるような言い回しとなる。
僕としても別にお好きにすれば良いとは思う。値段は関係無いし、煌めくだけのただの小さな石と割り切るも良し、不変の輝きを誇る高価な神秘の宝石に誓いを立てるも良し。
ただ、人生の中でダイヤモンドを買う機会なんて人生でそうそう無いぞ、とも思うわけで。
結婚を意識する
まぁ僕もいい歳になってきたので、ぼんやりと結婚などを考えるようになった。
20代の頃には一切浮かばなかった二文字。人生何があるか分からないものだ。
確かに僕のように音楽や酒に放蕩し、スパイスからカレーを作り出したりするような男と結婚は結び付かないだろう。
これで一人キャンプが好きで車好き、ギャンブル好きだったらもう役満だが。
というわけで機が熟し、ダイヤモンドを買いに行くことにした次第である。
婚約指輪、どこで買うか
ブライダル系に特化したジュエリー専門店から国内企業まで、色々なブランドがある。
申し訳ないが「二人で思い出の品を作る」的なハンドメイドには惹かれなかった。不格好な形になってしまうより、プロが作った精巧で寸分の狂いも無い完璧なものが欲しい。
結果として一つ目に寄ったお店で決定してしまうのだが、いくつか候補を絞った。
調べてみると意外とショップが多くある。今までは縁が無く街の風景と化していたが、なるほど、確かに思い返せばあそこは警備員が居たな、等と考える。
ダイヤモンドについて
ダイヤモンドは相変わらず価格が高い。希少価値もあり、加工には技術を要する。カットの際に原石を大きく削って作成するため、完成品はサイズ以上の価格となる。その上、需要も高い。
ダイヤモンドは基本的に日本では採石出来ないため、どういうルートで日本で辿り着くかにもよって値段は変わる。
ダイヤモンドそのもののクオリティももちろん重要で、以下の国際基準*1がある。
いわゆる4Cと呼ばれるものだ。
Carat=カラット
宝石でしかお目にかかれない単位、カラット(ct)。なんと実は正式な国際単位ではないにも関わらず、世界中で使われている何とも不思議な単位である。
実は2つの意味があり、一つは質量、もう一つは金の純度を表す。後者は18金、24金などのアレである。24カラットを100%純金として表す単位となる。
現在の定義では1ct=200mgであり、一般的に売っているものは0.2~0.3ct前後が多い。
質量なので幅は固定ではないが、目安として0.2ctでだいたい3.7mm、0.3ctでだいたい4.3mmくらいとされる。0.4ctくらいから目視でもそれぞれも面が視認出来るようになり、一定の大きさからは急に値段が跳ね上がるイメージ。
Cut=カット
最初は石の塊であるダイヤモンド。もちろん最初からあの形ではないし、実は最初からキラキラと輝いているわけではない。
あの輝きは計算された緻密なカット方法により、光の全反射を意図的に起こさせているためである。
それ故、熟練の技術が必要な部分となり、カットは4Cの中でも大きなウェイトを占める。
ランクは
- EX・・・EXCELLENT
- VG・・・VERY GOOD
- G・・・GOOD
- F・・・FAIR
- P・・・POOR
の5段階。
EXはまばゆい光がどの角度から見ても溢れる。
VGも十分だが、EXと比較すると多少の見劣りはある。
Gも綺麗ではあるが、やはり上位ランクと比較してしまうとやや見劣りする。
Fは角度によって光が鈍り、対称性にも難がある。
Pは明らかに対称性に難があり、光を活かしきれていない。
下位ランクにすればコストは下がるが、せっかくの石のポテンシャルを活かしきれていないという意味ではコストパフォーマンスが悪いとも取れる。
Color=カラー
カラット、カットに関しては比較的見てわかりやすい要素だが、カラーはちょっとわかりづらい。
簡単に言えば黄ばみが無い方が高ランクになる。
ピンクやブルーカラーはまた別軸で需要があり、それはそれで高値となる。
カラーはD~Zまでの23段階。
DEFは最高ランクで無色透明。GHIJも十分無色透明と呼べる。
KLMは「まぁ、言われてみれば」くらい。光源によっても印象は異なる。
Nあたりからは素人でも色味があるのが認識できる。Sあたりからは需要も無いためあまり宝飾店で扱わない。
ちなみにABCが無いのは、この基準が出来る前に使用していたそれぞれの宝石商独自のランクとの差別化のため。「1st,2nd」とか「A,B,C」とか「AA,AAA」とかのランクが乱立しており、新基準がこれらと混同してしまうのを防ぐ目的で敢えてDからにしたと云われている。
「Diamondの頭文字だから」という説や「C以上は実現不可能だから」という説もあるが、GIAの公式見解によるとこれらは誤りで、従前のシステムとの混同回避が目的であるとしている。
Clarity=透明度
こちらは正直ルーペや専用の器具で拡大しないと分からない範囲となるので、好みの問題になる。
- FL・・・Flawless、内外ともに傷・内包物が一切無い
- IF・・・Internally Flawless、外部に微細な傷があるものの、内側には内包物が無い
- VVS1~VVS2・・・Very Very Slightly Included=ごくごく僅かな内包物。熟練技師が10倍に拡大しても内包物を見つけることが非常に困難なレベル
- VS1~VS2・・・Very Slightly Included=ごく僅かな内包物。熟練技師が10倍に拡大しても内包物を見つけるのに苦労するレベル
- SI1~SI2・・・Slightly Included=僅かな内包物。素人でも10倍に拡大すればギリギリ見つけられなくもないレベルの内包物
- I1~I3・・・Included=内包物あり。肉眼で確認できるほどになり、輝き・耐久性にも影響が出る。
基本的にFLやIFは流通が無い。業界人でもFLにお目にかかれる機会はそう多くなく、一般的に流通する中での最高ランクは実質VVSとなる。
4Cの組み合わせ
これら4Cによりダイヤモンドの価値が決まるのだが、これらはオーダーメイドで選べるものでは無い。選べなくもないが、入手に時間がかかる。
それぞれの組み合わせのものが在庫としてストックされており、それらの中から自分の理想に近い物とマッチングしていくことになる。
例えばカラット数が大きければ、質量が大きい分どうしても内包物は見つけやすくなるためクラリティは下がる。双方を満たしていても黄色みがかっているものもある。
自分が4Cの中で何を優先するかを考えておくと良い。大きさなのか、透明度なのか、などなど。
買いに行く
電話で来店予約をし、見に行くことにした。
どんな服を着れば良いのか分からなかったが、あまりに高級な服を着て行ってもし目玉が飛び出る値段の物を提案されても困ってしまう。
というわけで、別に普通の服で行くことにした。
何件か候補があり、一軒目。
大まかに、リング部分とダイヤモンド部分の2つを選んでドッキング、という形となる。
リング
まずはリングを選ぶ。あんまりゴテゴテとし過ぎていない、シンプルめな物を選ぶ。そこまで日常で付ける物では無いが、飽きの来ないデザインが良いような気がした。
価格も一応「これくらいかな」程度の予算がある中で、どちらかというとリングよりダイヤモンドにお金をかけたいとも思っていた。
ダイヤモンド
ダイヤモンドと一口に言っても、10万円くらいの物から土地が買えそうな値段の物まで本当にピンキリ。やはりカラット数が上がると値段は跳ね上がる。
店員としても提案できる値段の幅が広すぎるので、予算を先に伝えておくと色々とスムーズになる。
大きさはそこまで重視せず、それよりも綺麗さや質を見たかった旨を伝える。
候補を絞る
リングがある程度決まり、ダイヤモンドを選ぶ段階になり、「それなら」と店員が奥に引っ込む。
こういうお店で一人取り残されたとき、本当にどう時間を潰していいのか分からない。
僕はあまりスマホを弄って待機するのが好きじゃないし、「スマホを弄って待機している」という様子を見られるのも好きじゃないため、基本こういう場では触らない。
店内に飾ってある他のダイヤモンドを見るなどする。いや、あまり見すぎると泥棒みたいか。
ボーっと天井を見てみる。監視カメラ多いな、と思うなどする。いや、これだと監視カメラの台数をチェックして死角を探しているみたいか。
何をしても良からぬ計画を企てる者みたいに映ってしまいそうで、変な緊張感を覚える。
と、そんな待ち方に想いを巡らせているなどと露ほども思っていないであろう店員が戻ってきた。
「これ、どうです?」
と言って持ってきたダイヤモンドは、小ぶりながらも様々な色の光を跳ね返す力強さを感じた。
カラー等級は最大のD、クラリティも実質ほぼ最上位であるVVS1、もちろんカットはEX。
小ぶりではあるが、このサイズでもカラット以外の要素が最大等級なのは意外とレア。
あれ、、もうこれにするか?すごく良い。一発目で出していいダイヤモンドじゃない気がする。
色々なお店で選びたい旨も最初に説明してあるため、店員も多分即決してほしかったのもあるだろう。次の店で良い石と出会ってしまえばもうここには帰ってこなかっただろうし。
特別に値引き出来る件も話された。常套句なのかもしれないが、相場から考えてもかなりお値打ちだ。値切りして選びたいわけではないが、逃してしまうと次は無いチャンスだなと思わせるには十分だ。
そして決定する
提案してもらったダイヤモンドは各等級素晴らしい。
流通しているダイヤモンドをいろんなブランドで見て比較をして相場や平均値を調べてはいたが、何かしらの数値を妥協することが多そうな印象だった。
カラーもカットも良いが、クラリティがVS2とか。カットやクラリティは良いがカラーがJとか。
大きさだけはもう少し大きくても良いような気はしたが、0.2ct以上はある。
ーーいや、決めるか。
そう思い、なんと一軒目で即決したのだ。リングには時間をかけたが、ダイヤモンドは比較的すぐに決まった。
完成を待つ
リングとダイヤモンドが決まったら、だいたい完成まで1ヶ月待つ。
連絡をもらい、取りに行き、完了だ。取りに行った帰り、後ろから追手が来ていないかドキドキしてみる等をしながら家路についた。
指輪を渡す
せっかく作ったのだから、渡さないと意味が無い。
これまた一生に一度のイベントだ。
家で渡すより、ちょっと非日常な所で渡したい。
かといって、例えば屋外で渡してほかの人にその様子を見られるのは好きじゃない。レストランで特別な演出が…とかもあり、確かに一生に一度ならそういうのも面白そうだとは思ったが、やはり何も関係の無い第三者に一部始終を見られるのは気が引ける。
良いホテルを取り、良いディナーを食べ、良い感じの頃合いで良い感じに渡した。
人生の歯車がまた一つ動いたような、線路の切り替えポイントを動かしたような、分岐路の進む先を選んだような、そんな感覚だ。
どんな道であれ、自分で選んだ道を歩んでいきたい。
*1:GIA=米国宝石学会が定めた品質評価国際基準